最高裁判所第二小法廷 昭和30年(あ)3137号 決定 1958年2月10日
主文
本件上告を棄却する。
当審における訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
被告本人の上告趣意は、事実誤認(所論佐良幸雄の検察官に対する各供述調書の任意性についてなした原判決の説示は正当である。なお、所論引用の司法警察員作成にかかる昭和二九年八月一九日付、同年九月三日付各供述調書は、一審公判廷において証拠として取調の請求もなく、従ってその証拠調もなされていないものであること、一件記録に徴し明白である。)と量刑不当の主張であり、弁護人高田利広の上告趣意二は、違憲をいうがその実質は単なる刑訴法違反の主張(本件起訴状記載の公訴事実が不特定であるとはいえないとして所論訴因変更を適法であるとした原判決の判断は正当である。また、被告人に送達された起訴状謄本に、単に起訴検察官の氏名記載が遺脱されているとの一事だけでは、被告人に対する右送達が所論のように無効であるとはいえない。)、その余の上告趣意は事実誤認、量刑不当の主張を出でないものであって、以上いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また、記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四一四条、三八六条一項三号、一八一条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。
(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)